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(1) 相続 (遺言も含みます)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない。
(2) 「遺産分割」が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければならない。
(3) 正当な理由なく相続登記申請を行わなかった場合は、10万円以下の過料(行政罰)の適用対象になる。
(4) 令和6年4月1日より以前に相続が開始している場合も、3年の猶予期間はあるが義務化の対象になる。
◆ 相続人の中に「所在不明の方」「未成年の方」「認知症の方」「外国人」などがいる場合は簡単には手続きを進めることができません。それぞれ必要な手続きを行う必要があります。
相続登記を放置してあるケースについて、今回の義務化の改正は大きな影響を受けることになる。
特に、多いのが「田舎の土地や山林」などのケースです。一刻も早く対応を検討する必要がある。
「相続土地国庫帰属制度」は、相続又は遺贈(自身の財産を遺言によって指定した人へ贈ること)によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる新しい制度。
(1)申請の段階で却下となる土地
Ø 建物がある土地
Ø 担保権や使用収益権が設定されている土地
Ø 他人の利用が予定されている土地
Ø 特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
Ø 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
(2)該当すると判断された場合に不承認となる土地
Ø 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
Ø 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
Ø 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
Ø 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
Ø その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
【費用】
l 申請する際には、1筆(※1)の土地当たり1万4000円の審査手数料。
l 負担金は、1筆ごとに20万円が基本。(同じ種目の土地が隣接していれば、負担金の合算の申出をすることができ、2筆以上でも負担金は20万円)
一部の市街地の宅地、農用地区域内の農地、森林などについては、面積に応じて負担金を算定するものもある。
ここでは、相続人申告登記を解説していきます ⇓ ⇓
相続登記の義務化にともなって相続人申告登記は新設された。
相続人申告登記とは、不動産の相続人が自分であることを申し出るための制度。
※法定相続人の範囲及び法定相続分の割合の確定が不要です。
【相続人申告登記制度の特徴】
①相続人全員から1人からでも申出ができる。
②申出を行った相続人の氏名・住所のみが職権で登記される。
③持分は登記されない。
④所有権の登記に、付記登記で実行される。
⑤法定相続人全員の氏名・住所を調査する必要はない。
⑥被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本を添付する必要はない。
⑦相続した不動産を相続人が第三者に売却する場合、別途、相続による所有権移転登記を備えることが必要
罰金を設けることで強制的に相続登記をさせることとなりますが、長期間相続登記を放置していると相続人の数を把握しきれていない不動産もある。
たとえば、何代も相続登記をしていない土地があり、登記上の所有者は死亡して100年近く経つ曽祖父のままといった土地も珍しくありません。この場合、現在に至るまでに何度も相続が発生しており、相続人が膨大に増えてしまっています。
このように簡単に遺産分割できない状況にある方々のために新設された制度が、相続人申告登記です。
※すぐに遺産分割して相続登記できないけれど、罰金を科されずに済む救済措置!
相続登記申請の履行期間内(3年以内)に相続人申告登記をすると、以下の内容を申し出たとして相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。
l 所有権の登記名義人について相続が開始した事実
l 自らがその相続人であること
申し出をした相続人の氏名や住所などが登記簿に記載されますが、持分までは登記されません。つまり、権利の取得を示すための登記ではなく、あくまでも「相続人であることを申告する」ためだけの制度です。これにより、法務局は登記簿を見れば相続人が誰かを容易に把握できるようになります。
l 登記簿に氏名・住所が記載された人の申請義務のみが履行されたこととなる
l 相続人が複数人いる場合、特定の相続人が単独で申請できる
l 他の相続人の分を含めた代理申請ができる
l 法定相続人の範囲や法定相続分の割合の確定をしなくてもよい
l 申し出をする相続人本人が所有権の登記名義人の相続人であることがわかる戸籍謄本のみの提出でよい
もし、亡くなった両親・祖父母が持っていた土地や建物がそのままになっているのであれば、一度法務局にて所有権がどのようになっているか確認しましょう。相続登記されていなければ、すべての相続人で共有状態となっています。
すべての相続人で話し合って相続登記することが最善策ではあるものの、難しい場合は連絡の取れる人だけとでも一緒に相続人申告登記を行いましょう。「相続登記の申請義務を履行した」とみなされ、罰金の支払い義務から免れることができます。
◆相続人申告登記の申請方法◆
1.申告する人
申告する人は、不動産の登記名義人の相続人本人です。相続人全員で申告する必要はありません。また、他の相続人の分と一緒にまとめて申告する代理申し出も可能です。登記簿謄本には、申告した人の氏名と住所などが登記されます。
2.申告内容
1.
所有権の登記名義人について相続が開始した事実
2. 自らがその相続人であること
3.申告する場所
申告の手続きは、被相続人名義の不動産所在地を管轄する法務局です。複数の不動産の相続人となっている場合、それぞれの法務局にて登記手続きをしなければなりません。まとめて1つの法務局で手続きできないため注意しましょう。
4.申告期限
申告期限は相続登記の期限と同じ、相続によって不動産の所有権を取得した事実を知った日から3年以内。
(ア) 相続によって不動産の所有権を取得した事実を知った日から3年以内
(イ) 遺産分割協議が成立した日から3年以内
施行開始日である令和6年4月1日以前に発生した相続に関しても、相続登記の義務が発生します。申告期限を守らず相続登記も行わなければ、義務を果たさなかったとして10万円以下の過料が科せられます。
5.必要書類
l 亡くなった方(登記名義人)の除籍謄本
l 申告する相続人本人の戸籍謄本
l 申告する相続人本人の住民票
相続登記では、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍がすべて必要ですが、相続人申告登記では不要です。
※登記すること自体に費用は発生しません。必要書類の取得費用などがかかることが考えられる。
相続人申告登記を行う際の注意点
登記簿に住所氏名が掲載されることから以下のことが考えられる。
l 固定資産税を請求される可能性がある
l 国や行政から不動産に対する対応を迫られる可能性がある
l 不動産業者などから営業を受ける恐れがある
あくまでも相続登記履行のための登記なので、当然、相続人申告登記をすれば相続登記しなくてもよいわけではなく、いずれ相続人全員で正式な相続登記を申請する必要があります。